GT管を使った 高一中二受信機 の リフォーム         2018−05

ご近所の 飯田サン から 60年ほど昔に製作された 真空管の受信機を頂きました 早速 リフォームを始めました   「高一中二」とは AM時代の主流だった受信機の構成で 高周波1段 中間周波2段 を意味する     9R−59 が超有名です  本機は9R−59の先代 9R−42の回路に酷似しています

パネルデザイン

巾 50cm 高さ25cm 奥行き40cm パネル,シャーシは1mm厚の鉄板  何かのジャンクを 再使用された形跡がある  メインダイヤルは当時流行の 扇型  3連バリコンにおのおの10PF程の タイトバリコンが並列接続され スプレットする 通信型受信機には必需装置です

BC帯 3.5MC〜10MC  8MC〜23MC  3バンド

写真には写ってはいませんが 電源トランスは 鉄心を分解、再組み立てした形跡があり 何かに使われていたトランスを巻きなおして使われていたようです

回路の構成

RF 6BA6 MIX 6BE6 OSC 6BE6  中間周波増幅は GT管の6AS7×2 低周波増幅 はST管の 57  42  BFOは今ではまず見かけない エーコン管の955  電源整流は5Y3 で構成されていました

当時のトリオ9R−42 (9R−59の先代)の回路構成とほとんど同じ

3バンドのコイルは トリオの 「LR−3」 が使われていました 

右上のアルミボックスの中に 955(エーコン管)を使ったBFOが組み込まれている     リフォームにあたり 特に意味はないが 低周波段のST管を 6SQ7 と 6V6 に変更した

プロダクト検波回路を 6SA7 で追加した

使用されている部品

左側の「CH」とメモした物は 電源平滑用のチョークトランス 昭和19年の名板があり 導通 絶縁とも良好   再使用した     トランス類の 60年間のダメージは大きく 出力トランスや他のチョークコイルはすべて断線していた

真空管ソケットが大きいので 配線は楽    コンデンサ類(ペーパーコンデンサ オイルコンデンサ 電解コンデンサ) は無条件交換        抵抗は 個々に測定して使えるものは 再使用 

交換した現代の部品は形状が小さくなっているので スペースができる

真ん中がバンド切り替えスイッチ 左側がRFコイル 下が局発コイル   
コイルの干渉を避けるため 直角に配置してある

BFO回路のブロック    

エーコン管 955 はソケットを使わず ピンに直接半田付けされている LC発振は安定しているので 回路は変更せずそのままにした

太い同軸ケーブルで プロダクト検波部に送る   微調に10PFのタイトバリコンを使用

右側は Sメーター  あまり見かけない2指針型 何かに使われていた ジャンク品を再利用されたと推定

バンド切り替えスイッチ を取り外した

60年分の汚れを 綿棒と爪楊枝で掃除したが 接触不良が残る  

マイカコンデンサはスチロールコンデンサに交換

ロータリースイッチを分解  

ウエハー部分を単体にして アルコールの「お風呂」に入れて 掃除 

かなり綺麗になった    ここまで分解すると 再組み立て時に 接点を痛めやすい ので  あまり勧められない 代替品はあると思う

再組み立てのあと 接点復活剤を 爪楊枝につけて 塗る ベーク材に付着すると のちのち面倒なことになる

コイルを取り外して 自作のLCメーターで インダクタンスの実測  

かなりの 埃と煤のため Q が低下しているのを疑うが Qメーターが無いため測定はできず

コイルのインダクタンスから バリコンとの共振周波数を算出する ほぼ計算値と実測値は一致

中波用のパッテングコンデンサの分解 

汚れが酷いので 分解してアルコールで洗う  電極とマイカ板が交互に6枚重ねてある

再組み立て後 容量は測定したが  Q の低下を疑う

短波帯には可変できるコンデンサでなく 計算で求めた スチロールコンデンサで代用する

手作り測定器をフル稼働して 測定

局発 発振周波数を カウンターで計測   通常 局発周波数は受信周波数より中間周波数だけ(455KHZ)高い  このため 局発バリコンに上記のパッテングコンデンサを直列に接続し 見かけの容量を小さくして 高い周波数を発振させる

カウンターで表示する値から455 マイナスしたのが 受信周波数    電卓が必要になる

この面倒を避けるのが プリセットカウンターで あらかじめセットした数字から入力周波数を 引き算(または足し算)して表示してくれる    

DSSやマイコンの表示になってからは あまり使われなくなったが 昔のアナログ受信機の ダイヤル表示をデジタル化するのに よく使われた

TC5070Pが代表的 リセットカウンタの自作 はこちら

中華製のプリセットカウンタ部品を使って 自作

IC  LCD  その他の部品を含めても ¥1K以下    プリセット周波数は455KHZ (FMは10.7MHZ)  最小桁がKHZ   ラジオ受信機に最適

地元の中波局 「岐阜放送」を受信中

木製の箱に収めた受信機  スピーカーボックス も自作品で レトロ

BC帯から23MHZまでの SSBとAM が聞こえる

現在の受信機に比べると 選択度は比較にならないが感度は意外に良い

戦後の部材の入手が難しい時代  いろんなジャンクを活用して 当時流行の受信機を ここまで 手作りされた 先輩の努力に感心した

右上に 中華製ICで自作した プリセットカウンタを取り付け  3Vの電源はヒーター6.3Vを整流して使用       60年昔の受信機が デジタル表示 になりました

トラッキング不良対策に2連バリコンを増設

パッテングコンデンサを固定コンデンサにしたため トラッキング不良(バンド内の高い周波数と低い周波数で感度差が大きい)が起った  そこで3連バリコンの RF段は使用せず 専用のバリコンを取り付けた

手持ちの2連バリコンを使用した  
 

同調の調整は面倒だが 感度差は なくなった

最初に使われていた電源トランス

経年劣化で 巻き線間の線間短絡(レアーショート)を起こしていた    名板は無いが 戦前に造られた ものと思う 

製作者の 飯田サン のお話では 木箱は大正時代の並4ラジオの箱を 廃品利用されたそうです (木箱はおよそ100歳!!)

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