結局部屋を片づけても盗まれたと思われるモノは無かった。 ジャスティーンの父、エリオスが残していった書籍も破れているものは多少あったが、冊数が減っていると言う感じはなかった。 他にも宝石やらドレスやら調べてみたが、なくなっていない。 片づけるといっても、そのほとんどがもはや使い物にならないぐらい壊れたりしていたのでレンドリアがとことん燃やし、その結果、ジャスティーンの部屋は前よりもすっきりしている 「盗まれてなくてよかった…と言いたいところだけれど、全然よくないわ……」 あんなにまで散らかしておいて何も盗みませんでしたというのは、かえって盗まれていた方が幾分マシなのかもしれない。 この怒りを一体何にぶつければいいのだろう。 犯人の目的が掴めない今、かなり複雑な心境にジャスティーンはいた。 「本当に……何がしたかったのかしら」 もう一度、考え直そうと目を閉じる。 (私が持っているモノで魔術師が欲しそうなモノ 第一はレヴィローズ。ジャスティーンが指にはめている指輪だ。 これを狙われてこれまでに何回も大変な目に遭ってきている。 だが、コレは盗まれていない。 (父さんの本の中に、何か重大な事が書かれてあったとか…?) ジャスティーンはあまり読書をしないため、エリオスの本をあまり読んでいない。 だから内容がどんなものだったのかはよく分からないが、天才と謳われた父のことだ。自分で魔術について研究などしていてもおかしくはない。 けれど (あ、シルフソード……ソールを?) 今はヴィラーネによって管理されている風の宝玉。 これはジャスティーンが見つけ出し、保護したモノだ。だが、別にだからといってジャスティーンが保持しているわけではなく、あのヴィラーネの手から盗むことのできる者は想像し難い。 犯人も、そのことについては知っていただろう。 となると。 (他に、何か 「リディオス!!」 そうだ、忘れていた。 光の宝玉 彼女こそ、ジャスティーンが持っていると思われているモノ。 母、サーシャさえ苦戦していた変わった性格を持つリディオスを。 地の一族のある魔術師によって捕らえられそうになったところをジャスティーンが手を伸ばしたのだ。 『契約はできないけれど側にいる』と。 だが、実際はダリィの手中にあり、時々ジャスティーンに対して不満を言ってくることもある。 ようするに 「じゃあ、じゃあ……もしかして狙いはリディオスだったの…?」 真実を知るものがいないここで答えを期待することはできないが、他にそうだと断定できそうな仮説がみつかならいのだ。 特に、リディオスはあり得そうで一番真実味がある。 (なら、私の部屋を荒らしたのは地の一族なのね) まだ、そうと決まったわけではないけれど。 それでも具体的な容疑者が現れてくると怒りがこみ上げてくるものである。 「ひとまず、ダリィの所に行って確かめてこないと…」 まさかダリィの部屋まで荒らしていないでしょうね、と嫌な想像をしながらも、重い足取りで彼女の部屋へと急いだ。 ← → |