北八ツの森再訪 ’97夏


 今年も8/26〜27と北八ツへ行ってきました。

1.麦草ヒュッテ

 昨年に引き続き、北八ツのちょうど中心あたりにある麦草ヒュッテに泊まりました。国道299号がこの峠を越えているので、その道のすぐ脇にありますが、中身はまぎれもない山小屋です。この日は、正午に自宅を出たので、小屋には午後3時に到着。少しだけ雨の混じる変な天候だったので、周辺散策もあきらめ、午後6時の夕食時間まで、部屋の中で読書などしておりました。夕食後、TYFさんご紹介のアルバムを拝見。ありました、私の名刺(^^; 小屋のスタッフも夏のアルバイトが含まれ、昨年とはやや異なるようです。暗くなって、ついにパラパラと雨音。星空もあきらめて午後9時の消灯までは読書の続きとなりました。消灯で真っ暗になるって、静かになった窓の外を覗くと、星が見えました。でも雲が少し残り、遠くの雷の光がときおり空を明るくします。明朝は晴れるだろうと、楽天的に考えて寝ます。

2.北八ツの森へ再び

 おおげさなタイトルですね(^^; これには意味があります。麦草峠の南側山域は、すでに一度訪れているのですが、そのときは雨またはガスという天候でしたから、今回は晴れの日にもう一度ということなのです。朝5時過ぎに目覚めると、すっかり明るくなっています。青空が見えます。安心してもう一寝入り・・・。6時から朝食を食べ、準備を整えて出発したのは7時頃でした。小屋泊まりにしては遅い(^^; さっそく、丸山の登りに取りつきます。予定は丸山〜中山を経てニウまで。白駒池経由で麦草峠へ戻るつもり。地図で見る限りは等高線の間隔は広めで比較的楽なようですが、以前の山行ではこの登りと下りが意外に苦しかったこともあり、予定は未定のつもりで進みました。

 

3.丸山から高見石

 「丸山」。八ヶ岳連峰の中で、これほど普通な山もあまりありません(^^; 名称もしかり。山容もなだらかな盛り上がりに樹木が繁るのみ。それでも北八ツの森歩きを決め込むなら、十分満喫できる山です。山頂は樹木で展望は開けませんが、そこから南に少し行った山頂の縁にあたるところに、やや視野の広がる場所(ここが頂上?)があります。そこから甲斐駒ヶ岳と仙丈岳が見えました。「高見石」までの下りはすぐです。その名のとおり、森に突き出た展望台のような岩の重なり。この日はガスもなく、眼下の白駒池が良く見えます。場所的には丸山と中山の鞍部にあたるため南北の視野が遮られますから、いわゆるパノラマ展望には不向きです。高見石小屋のテラスは「ご自由にお使いください」との看板があり、遠慮なく朝のコーヒーを入れることにした。ここでの休憩時間が結局30分(^^;

 

4.中山と展望台

 中山も緩やかな勾配の山です。比較的低い樹木の間を徐々に高度を上げていきます。私が山を始めた翌年、なかなか山頂にたどり着けずにあえいだ道。果たして今回はどうだろうか、とは思ったものの、案外あっさり到着しました。ここも山頂は樹木が繁っていますが、ここから10分ほど南へ行ったところに「展望台」があるのを知っています。頂上を示す柱には目もくれず、その場所へ向かいました。いきなりその場所は現れます。蓼科山の山頂のように、岩のゴロゴロとしているやたら視界の開けた場所。これが中山展望台です。西から北側の視野が特に良好です。がしかし、そこにあるであろう北アルプスは、雲に隠されてまったく見えませんでした。蓼科山や霧ヶ峰は良く見えます。中央アルプスと御嶽もうっすら。甲斐駒ヶ岳や仙丈岳が雲に見え隠れしますが、その左に天狗岳がそびえるため、他の南アルプスの峰は隠されています。東天狗&西天狗が目の前に構えます。硫黄岳の左部分、爆裂火口がのぞいています。東方向には浅間山の頭が確認できましたが、樹木があってやや視野が隠され気味。惜しまれるのは、やはり北アルプスか。残念。でも、広々として風の気持ち良い場所です。また30分滞在(^^;


 

5.ニュウへ

 中山からの下りのとりかかり。ここでこれから向かう「ニュウ」が見えます。森の中にチョンと突き出た岩峰。「ニュウ」
 今回の山行で見た道標には「乳(ニュウ)」と書かれているものもありましたが、この地方では稲塚のことを「ニュウ」というようですので(注1)、ちょっと違うかなと思いました。どなたか「稲生」と書かれていませんでしたか?本当は「ニウ」というのが正しい記述かなと思います。どこかでそういう記述を見たことがあります。これを発音してみればどうしても「ニュウ」と聞こえますからね。とにかくユニークな名称です。中山を下ってすぐ、中山峠へ達する手前にニュウへの分岐があります。東天狗から中山峠そしてニュウ方面まで、垂直に近い崖のような地形がぐるっと取り囲みます(注2)。その縁の上部を沿うように道が付いていますが、樹木のおかげで恐怖感はありません。ニュウへのルートでは、右手に硫黄岳の爆裂火口の異様を木々の間から見ながら進みます。目的の岩峰はまったく見えてきません。白駒池への分岐手前で突然にその姿を現します。ここからはもう一息でニュウの頂上です。ニュウに到着。誰も居ませんので私が独り占めでした。眼下の白駒池、その向こうに北八ツ北部の峰々と蓼科山。右手遠方にかすかに浅間山。佐久の盆地の向こうにも山の稜線がありますが、知識外で不明(^^; ニュウ南側は崖です。稲子岳の向こうには硫黄岳と天狗岳。歩いてきた中山と丸山。北八ツの森の上に浮かんだ特等席で、涼しい風にあたりながらの早めの昼食。これも贅沢なひとときと言えましょう。また30分以上の休憩(^^;

 注1)山村正光著『中央線から見える山』(実業之日本社)P210からの入笠山の章の中で、岩科小一郎氏の説として取り上げられています。ちなみに、入笠山の発音=「にゅうかさやま」です。

 注2)このあたりの地形については、広島三朗著『山が楽しくなる地形と地学』(山と溪谷社)のP67から、「稲子岳の山体崩壊」の図解入りで解説されています。そういう知識を持って見てみるとまた面白みも違ってきますね。その稲子岳へは、アプローチルートは無いようです。

 

6.白駒池から麦草峠へ

 ニュウから白駒池への下り道。ここはまさに森の中で、非常に気持ちの良い空間です。森林浴という気分もわかりますね。下部へ行くにつれ苔むした倒木や岩が多くなり、ますます気分をもり立てます。途中、稲子湯への分岐点を通過したあたりからかなり平坦になり、やがて小さな湿原に出ます。白駒池はもうすぐそこ。にゅうからここまでにすれ違ったのは、たったの一人きりでした。池の周遊道に到達し左に回りこみます。ここからはもう観光客がたくさんいる世界で、「下山したな」と実感します。白駒池から麦草峠へ至る道では、また静けさが戻ります。日本庭園のような雰囲気の場所を抜けると再び森の中の道。しばらく行って、ふいに明るい場所へ飛び出すと、そこはもう峠の草原です。「旧麦草峠」という場所を遊歩道が通っています。そこは今の国道の峠よりはやや小高い地点で、「峠≠最低鞍部」の実例ともいえます。国道の脇には、池や湿原のような場所がありますから、恐らく最低鞍部は人が通れるような所ではなく、そこを避けて道があったのではないでしょうか。

 

7.石遊温泉

 麦草峠から国道299号を下っていきますが、その道沿いには日帰り温泉というのはあまり見当たりません。温泉宿で入らせてもらうのも手です。蓼科温泉郷に回るべきか、諏訪湖SAの温泉へ行くか、など考えながら地図を見ていると、国道沿いに「石遊温泉 500円」という記述を見つけました。道の入口がたいへんわかりにくいのですが、峠方面から見てハーブ園を過ぎたすぐの分岐を右に入ります。田んぼ道を不安になりながら進むと、それは本当にありました。まだ新しい木造の建物です。受付横の券売機で500円の入浴券を買って窓口に提出。簡単な脱衣場から一旦屋外に出て、屋根付きの露天風呂に至ります。きわめてシンプルな造り。帰りに受付で聞いたところでは、できて2年くらいとのことでした。ということで今回の山行、温泉で締めくくりもできました(^^)
 やはり山はいいですね。

 

  おわり

(1997.8.27〜31 FYAMAPに掲載)

 

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