今日も彼らは舞っていた。
空を切り、ハラハラ。地へと、ハラハラ。
とても淡くて、でも、仄かに色づいていた。
でも、遠くから見ていた自分には分からなくて。
「雪……」
冷たくない、雪…?
これは ?
「桜、ですよ」
ふと、誰かが言う。
「君は……」
誰だったっけ。思い出せない。
いや、会った事があるのだろうか。それすらも、分からない。
「初めまして」
「…ああ」
やはり、会ったことはないんだ。
だって、彼女は「初めて」だと言ったのだから。
「綺麗…ですね」
「ああ」
「ずっと、こうでありたいですよね」
「ああ」
「ふふ、そうですよね」
「ああ」
何度も頷いた。彼女の問全てに。
「ですから 」
ザ …
突風。そして、花弁の渦が二人を覆った。
瞳さえ開けていられないほどの強さ。
「ずっと叶い続けるんですよ」
ジリリリリリリリ ン
「!!」
反射神経で思わず手が出て時計を止めてしまう。
途中で肘がベッドの角にでもぶつけたのか、ジンジンと痛みを発していた。
「っ……かったりい」
大きく息を吸って…ゆっくりと吐き戻す。
それを2、3回繰り返した。
「だるいな…」
首を鳴らしながらベッドから起きる。
なんだったのだろう、と仙一は思い返してみようとする、が、あやふやでよく思い出せなかった。
それがよけいにイライラする。
本当に、なんだったのだろう。嫌な感じではなかったハズだ。むしろ、心地よかったかもしれない。
感覚はなぜかハッキリと覚えているのに。
「誰か出てきたっけ…?」
いたような、いなかったような。
自分一人…だったのだろうか。どこかにいて、誰かと話していたのではなかったのか。
「まぁ、所詮は夢だしな」
そう、たかが夢を見ただけのこと。
ただ、気になっただけだった。それだけだった。
なのに、どうして自分はこんなにも不安になっているのだろう。
「まあいいや」
そんな一言で終わらせれるほどのものではなかったが、これ以上悩んでも無駄だと察したのか、仙一は素早く着替えると階段を降りていった。
開かれた窓から、ハラハラと舞い落ちる桜。
一つ、二つ。
暫く立つと、砂のように崩れていった。
← →
|